
夫との個別LINEを開くたび、
なんだか自分が哀れに見えてくる。
高卒求人の件も、お盆の帰省の件も、夏季賞与の話も――
どれも、夫が乗り気でなければ既読スルーで終わる。
既読のマークだけが、私の気持ちをじわじわ削ってくる。
……そんな反応に、いちいち心を乱されるのも、もう疲れた。
だから私は決めた。
緊急でなければ、もうリマインドはしない。
「加齢でスマホ操作が苦手なのかな」とも考えたけれど、
それなら電話の一本くらい、かけられるはずだ。
――そんな期待は、ここで手放す。
それより、もっと建設的なことを考えたい。
たとえば、これからの自分の人生の話。
ゼロからのスタートだった私たちの生活。
だからこそ、夫名義の不動産も共有財産として扱えるはずだ。
私自身がコツコツと貯めてきたお金も、
あくまで私の収入であり、私の財産である。
夫の貯金が少ないのは、夫が使ったから。
そこに私が合わせる理由は、どこにもない。
さて、分けるとするなら、どう分けよう。
赴任先の土地と建物――リセールバリューがない。不要。
アパート――改装費が今後の家賃収入を上回りそう。これも、いらない。
自宅――ここはリフォーム済み。
将来的には、大学生向けのシェアハウスにするつもりで手を入れてきた。
なら、ここを私がもらおう。
軌道に乗れば、わずかでも家賃収入が期待できる。
ローンの残債だけがネックだけれど、
残された期間で繰り上げ返済を目指せば、十分に可能だ。
そうと決まれば、やるべきことは明確だ。
夫にとって、長男も長女も、すでに“家族”ではないのだろう。
家族LINEにさえ、彼らは入っていない。
離れて暮らすほうが、みんな楽だ。
誰に気を遣うこともなく、自由に会える。
夫も夫で、私に遠慮せず、娘や孫に会えばいい。
旧車の売却益だって、思うように使えるだろう。
……あれ? 旧車も、共有財産だよね。
と考えた瞬間、ふっと肩の力が抜けた。
修理代に600万円。
あれだけこだわったのだから、金額に換算すれば、ローンの残債くらいは返してもらってもいい。
そう思えば――
もう、頑張らなくても、自宅くらいはもらえるじゃん。
私、お金を貯めておいて、本当に良かった。
いざというとき、やっぱりお金は裏切らない。
気持ちじゃどうにもならない場面では、数字が私の味方をしてくれる。
こんなふうに自由に選べるようになったのは、
今まで、自分を後回しにしてでも頑張ってきたからだ。
……あの頃の私、ありがとう。
振り返れば、
反面教師のような親に育てられたことも、
いま思えば、ひとつのギフトだったのかもしれない。
原点に返るようにして、静かに思う。
――きっと、この時のために、そうであったのだ。

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