
今日もまた、夫との違いが浮き彫りになった。
発端は、元請けの会長から届いた「さくらんぼ」だった。
それを、少し早めのお中元だと思った私は、何を返そうかと夫にLINEを送った。
すると、「マンゴーを送ってほしい」と返ってきた。
でも、今の時期はまだ早い。
路地物が出る頃を見計らって何度も市場に足を運ぶのは、正直気が重い。
私は、これまで通りでいいのではと返した。
「例年通りなら、会長にはカタログギフトを、会社にはお菓子を送っていたよ。
マンゴーの時期を待って何度も通うのは負担だから、それでいい?」
すると、夫からは意外な返事が返ってきた。
「お中元?」
——え? お中元じゃなかったの?
「今、さくらんぼが旬だから送ってきたんだと思うよ」と、夫。
……出た。
私が苦手な、“旬の物を送り合う文化”。
そこに正面から反論しても、話はややこしくなるだけだ。
「ごめん、そういうの苦手だから、まったく思い至らなかった。
義妹は市場で働いてるし、入荷情報も早いはずだから、お願いしてもらえないかな。
領収書をもらえれば、私が支払いに行くから」
毎年この時期になると、私は少し戸惑っていた。
マンゴーを送るタイミングとお中元の時期が重なって、なんだか二重に贈り物をしているような気がして、ずっと腑に落ちないままだった。
数年前、一度だけ夫とカタログギフトを一緒に選びに行ったことがある。
だからてっきり、意図は伝わっていると思っていた。
でも、どうやら違ったらしい。
しばらくして、夫からこんなLINEが届いた。
「カタログギフト、送らなくていいです。お中元は会社にお菓子だけで」
ようやく、二重で送っていたことに夫自身も気づいたのかもしれない。
よくある話だ。
最初は慣例として始まったものが、いつの間にか個人の文化にすり替わってしまう。
夫は、私に何も言わず、現場で出会った何人もの人と、そういったやり取りを続けていたらしい。
中には、会社の経費で処理できそうな相手もいたのに、すべて自腹で。
——だからか。
どうりで、食べきれないほどの果物が毎年届くはずだ。
夜、夫から電話があった。
「沖縄にいた頃は、俺もその文化、よく分かってなかったから」と、ぽつり。
なるほど、きっと彼なりに思うところがあったのだろう。
でも、私は思ってしまう。
“旬のフルーツ”なんて、いつ食べごろか分からないし、まとめて届けばすぐに傷んでしまう。
誰かに配るのもひと仕事で、正直、その文化圏の中だけで完結してくれたらありがたい。
だから、今回、私たちはいくつかのルールを決めた。
季節のフルーツを家に送るのはやめてほしい。親戚に贈るのは構わないけれど、その場合は自腹で。
お中元は、私に任せる。
会社の経費で処理できそうな相手とのやり取りは、必ず報告し合うこと。
フルーツのお返しは義妹に依頼。情報も早く、支払いだけで済む。
沖縄に帰省する際の手土産は、私は不要。取引先がないため経費にはならない。買いたいなら自腹で。
赴任先へのお土産は、会社の経費で問題ない。
ここさえ守ってくれれば、私はもう何も言わない。
夫がどんなに交際範囲を広げようが、それは彼の個性だと思える。
ただ、放っておけばきっと夫は、
「従業員がたくさん買ってたから」とか「喜んでくれるから」と言って
これと言った理由もなく、どこまでも買い続けてしまう。
だから、自腹の線引きは必要なのだ。
夫は、優しい人だと思う。
でも、私だって、優しい人だ。
ただ、お互いの「優しさの方向」が違うだけ。
無理に合わせるのではなく、違うまま尊重し合えたらいいと思う。

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