【1000分の32日目】業務連絡だけの夫婦、それでも
自動車保険の更新日が迫ってきている。
体調を崩していた夫は、外交員とちゃんと交渉できただろうか。
気にはなるけれど──とりあえず、来週まで待ってから、もう一度リマインドすることにした。
今日は、旧盆の帰省に備えて、従業員たちの航空券手配についてLINEを送る。
福利厚生費で落とせるとはいえ、少しでも安いほうが、会社としては助かる。
いまなら、スーパーバリュー往復割引で、ひとり4万円もかからずに済む。
その予約画面のスクショを添えて送った。……けれど、返事はない。
また、ギリギリになってからお願いされるパターンか。
──こういう時、何のために私が“代表取締役”なのかと、ふと虚しくなる。
夫の都合で会社の代表に置かれてはいるけれど、
実際の決定権は、ほぼゼロに等しい。
法的にアウトな案件だけは断っているが、それ以外は、夫の一声でGOになる。
私の意見なんて、最初から求められていない。
航空券の件だって、
いつもギリギリになってから「格安航空券サイト」と「航空会社の直販」を見比べ、
「航空会社は高い」というイメージだけで判断しようとする。
──ほんと、アナログ思考のカモねぎ体質。
また、既読スルー。
「……あーーー、体調悪いから。しかたない、よね」
と、棒読みで叫んでみる。
誰に向けたでもない、空に投げた独り言。
高卒の求人もそろそろ始まる。
それだって、いつどんなタイミングで切り出せばいいのか……。
業務が滞っていく中、少しだけイライラしていたら、スマホが鳴った。
夫からの着信だった。
「LINEどういう意味?」
……え、そこから?
「9月4日から6日までが旧盆だから、その前後の航空券が、今なら安いって意味」
そう説明すると、少し元気そうな声で「了解。帰りたいやつがいるか、確認してみる」と返ってきた。
「体調、どう?」と尋ねると、「大丈夫」とのこと。
たぶん、今回もまた、夫のところで止まる案件になる。
自動車保険の件は「いま見積もり取ってもらってる」とのことなので、
私の出る幕は、なさそうだ。
業務連絡だけのつながり。
それだけの夫婦だけど──
それでも、夫の声が少しだけ元気そうで、
私は、やっぱり「よかった」と思ってしまう。
いつも応援ありがとうございます。
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