
整理計画を進める中で、赴任先にある夫名義の土地と建物のことが気になった。
もし夫に万が一のことがあったら、子供たちが処分に困らないだろうか──。
広さの割に購入時の価格は安く、お世辞にも「リセールバリュー」がある物件とは思えなかった。
将来、会社の拠点をそこに移すなら、会社が個人から買い上げて名義を移し、会社とセットにしておくほうが、後を継ぐ人にとってもメリットがあるはずだ。
夫も資産を現金化できるし、WIN-WINになるだろう。
そう思い、売るときには不動産会社を通して適正価格であれば、税務的にも問題ないだろうと見込んだ。
どう夫に切り出すか迷っても仕方ないので、とりあえず移転の話からつなげて、
「管理しにくい県外の土地は、移転を機に会社で買い取って現金化しておいたらどうか」と提案してみた。
夫の答えは、
「今は会社から家賃収入を受け取っている、そのメリットがなくなる。それに近頃は建物も増えてきている」
という反対だった。
夫から聞いた話だが、数年前に近くの小学校が廃校になると聞いていたので、私は中心地になる可能性は低いと考えていた。
けれど、夫がそう言うならと、この話はそこで終わりにした。
その夜、夫から電話がかかってきた。
何気ないやり取りの後、
「もしかして、何か悪いこと考えてる?」と切り出された。
「悪いことって?例えば?」
「いや、考えてないならいいんだ。最近、改装とか土地の売却とか言ってくるから、何かあったのかなと思って」
「離婚を視野に、色々整えているだけ。改装も売却も、悪いことじゃないよ。子供たちが後々困らないようにしておきたいだけ」
「離婚?」
夫は驚いたように言った。
あれだけのことを言っておいて驚くとは、私の気持ちはどこまで置き去りにされているのだろう。
「うん、手紙やノートで伝えても明確な答えはなかったし、あなたをコントロールしたいわけじゃないから、離婚の話は黙っていようと思ってたんだけど」
「旧車は売るよ。ごめん」──また的外れな話になった。
「ねえ、あなたが旧車を修理してお金がどんどん嵩んでいったとき、私が文句言った?
私が泣いたのは、あなたが孫の家の頭金を出してあげたいって言ったときだと思うけど」
「あの話は、やってあげたいけどどう思うか聞いたんだ。誰もやるって言ってないだろ?」
と、言い訳を始めた。
「2回も私に聞いたってことは、やりたいんでしょ。だから別れてからやってあげたらいい。私はもう苦しすぎて関わりたくないよ」
「やらない、やらないよ。お前を失ってまでやることじゃない。もうこの話は終わりにしてほしい」
あ──急に冷めた。
この人は、表面を取り繕うためには、自分の意見すら飲み込む。
問題の根本的な解決は、決してしない人だ。
気持ちを悟られないよう、「わかった」とだけ夫に告げた。
その人の本心は、言葉ではなく行動に表れる。
信じるのは約束ではなく、これからの現実だけ。

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