【1000分の21日目】それでも、手紙を書こうと思った朝
土曜の朝。
昨夜の『それスノ』を見ていたら、なんとなく心がやわらいだ。
笑ったはずなのに、胸の奥にあたたかいものが残ったまま眠り、そして朝を迎えた。
週末モードに入りかけていた心が、ふとした拍子に、現実へと引き戻された。
あの件。
3週間近く、心のどこかで引っかかったままの、あのモヤモヤ。
もう一度ちゃんと向き合わなきゃと、思った。
顔を見て伝えるのは難しい。
きっと途中で泣いてしまう。
でも——書くことなら、できるかもしれない。
電話でもない。LINEでもない。
もっと自分の中から出てくる、まっすぐな言葉で、届けたいと思った。
これは、責めたいわけでも、操ろうとするわけでもない。
私の気持ちを“わかってほしい”だけ。
選ぶのは、あの人自身だということも、私はわかっている。
ただ、これまで私がどうやって自分を支えてきたか。
何に傷つき、何を信じたかったのか。
それだけは、知っておいてほしかった。
何年ぶりだろう。
誰かに“手紙”を書こうと思ったのは。
拝啓
突然このような手紙を書いて驚かせてしまうかもしれませんが、私の気持ちを整理して伝えたくて書いています。
今回、〇さんから前妻家庭の仏壇を心配し、財産を残してあげたいという提案があったとき、私の中でこれまで築き上げた30年が大きく揺らぎました。
長い時間をかけて積み重ねてきた信頼が、一瞬で崩れたような感覚でした。
思い返せば、仏壇に対する〇さんの思いが強いことは理解しています。また、前妻のお母さんに大変お世話になり、義理堅い〇さんのことですから、恩返しがしたい気持ちもあるでしょう。
さらに、何もしてあげられなかった娘さんに何か残してやりたいという思いもわかります。
私も〇さんの優しさや責任感を知っているから、何度も自分を納得させようと心の中で繰り返しました。
でも正直、本当につらかった。最初に浮かんだ言葉は、「離婚させてしまってごめんなさい」でした。
〇さんは「今の家族が一番だよ」と言ってくれましたが、どうしても「二番もあるよね?」という疑念が消えませんでした。
個々の価値観の違いはあると理解していますが、それでも「勝手にお金あげたら怒るだろ~」という言葉を聞いたとき、もう心の中で決まっているんだな、と感じて涙が溢れました。
以前、「もし浮気をしたらどうする?」という話の中で、「墓場まで持って行って、自分の気持ちが楽になるために罪悪感を私に預けないで」と言ったことを覚えていますか?今回の件もそれに似ています。
〇さんの気持ちを受け止めるつもりでいましたが、知らないうちにその罪悪感が私の心に重くのしかかっていました。
私は、もう〇さんの過去や関係に対する責任を背負うことはできません。そして、前妻家庭の話題で傷つきたくもありません。どうか、隠せることは隠してください。私は、今の家族との時間を大切にしたいのです。
ですが、旧車の売却金や貯金を使って前妻家庭にお金を渡すことには反対です。正直なところ、もう前妻家庭とは関わっていてほしくないというのが本心です。
さらに、これまで貯めてきたお金が手のひらからこぼれていくような焦燥感があります。貯金を続けても意味があるのかと考えてしまうこともあります。努力して積み上げてきたものが、どんどん流れ出ていくような感覚が心を締め付けています。
ただし、もしそれが遺産相続という形で残すのであれば、私は気持ちに納得がいくと思います。
今回の件は、〇さんに自由になるお金が少なかったことも原因だと思っています。そこで提案があります。旧車の車検代は自分で貯めてください。貯金が苦手だと思うので、これまで減額していたお小遣いを○○万円に戻し、家計の必要経費を差し引いた上で、残ったお金の管理を〇さんに任せたいと思います。
私たち夫婦の将来についても、改めて話し合いたいです。物理的な距離がある今だからこそ、お互いの気持ちを整理し、どう生きていくか話したい。どうか、私の想いを聞いてください。
先日、久しぶりに二人で出かけた時、〇さんの気遣いを感じてとても嬉しかったです。「私を心配して帰ってきてくれたのかな」と思いましたが、旧車のことが気になっていただけだったと知った時、少し寂しくも感じました。
それでも、私は〇さんとこれからも歩んでいきたいと思っています。
敬具
遊民
書き終えて、そっとペンを置く。
気持ちが全部伝わるかどうかはわからない。
それでも——これは、私なりの誠意だった。
これはコントロールじゃない。
ただ、自分の人生を、自分の手に戻すための、静かな一歩だった。
これで伝わらなければ、もう仕方ない。
私は私の言葉で、ちゃんと届けた。それでいい。
いつも応援ありがとうございます。
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