1000日後に離婚する2人

【1000分の24日目】スクリーンの向こうにいるあなたと、同じステージを夢見る夜

【1000分の24日目】スクリーンの向こうにいるあなたと、同じステージを夢見る夜


昔から「男の子の孫が生まれたら、一緒にキャッチボールがしたい」と言っていた夫。
その夢を叶えるために、健康にも気をつかっていることを私は知っている。

前妻との間の娘や孫に会うことは、私にとって何の問題もない。
むしろ、自由に会って、楽しい時間を過ごしてほしいと心から思っている。

正直、あの一文で揺れたのは、そこに“前妻の影”がちらついたからだ。
それがなければ、私はきっと何の迷いもなく、「いいね」と返していたと思う。

本当に、それだけのことだったのに。

どう伝えれば、責めているように聞こえずに、私の気持ちが届くだろうか。
──悩みながら、AIと一緒に言葉を選び、夫に伝わるように工夫してLINEを送った。

すると──
今までになく長い返事が返ってきた。

ごめんね(ごめんね)
遊民がそんなに気にしているなんて思わなかった
今の家はオレと遊民が築いた家だからそんな事考えた事は無いよ
大丈夫だよ1番は今の家庭です(愛してる)

キャッチボールは、次男と次女の子供とします🙇それまで元気で頑張ります(頑張る)

今が1番幸せですよ(幸せ)

──「1番は今の家庭」
この言葉、実は何度も聞いたことがある。
慣れすぎて、正直ちょっと響かなくなっていた。

そもそも、順位をつけること自体が違和感なのに。
それに気づかないところが、また……うん、夫らしい。

言葉はあっても、肝心の「感じる」という部分に届かないと、なんだか空を切る。
なのに、こうしてスタンプを添えてくるところは、ちょっとかわいくて、ずるい。

──おっさんのくせに、スタンプ多いわ!

と、ツッコミながらも、「今が1番幸せですよ」
この一言は、なんだかんだ言っても嬉しかった。

そして私は、こう返した。

一応、自分たちの人生だし楽しい方がいいのかな〜って思って
遊民はたくさん幸せにしてもらってるし感謝してるよ。
次男と次女の孫、楽しみだね。いつもありがとう。

──AIが翻訳してくれた私の気持ち。

どう書けば、夫に伝わるのか。
どう書けば、あの人が言葉を返してくれるのか。

そんなふうに悩んで、添削してもらった末のメッセージだった。

そして、最後に届いた一文。

高倉 健で〇月〇日 生まれの男です よろしくお願いします(お願いします)

と、「おやすみなさい」で締めたLINE。

──…は? なに急に(笑)

でも、すぐに意味はわかったのだ。

「自分、不器用ですから」

そう、私たち世代にはなじみのある、高倉健。
不器用だけど誠実で、寡黙だけど背中で語る──そんなイメージ。

そういう俺だけど、よろしく。
たぶん、それが夫の言いたかったこと。

だけどさ…

背中で語られても──おーい、背中に口ついてないよ〜!
黙って俺についてこい──ごめん、先来ちゃったわ!

夫と私のペース、任侠映画とミュージカルじゃ、そもそも世界観が違いすぎる。

私が舞台の中で歌って踊っている間、あの人は画面の奥で、一人渋く煙草をふかしている──そんな感じ。

気になって「任侠ミュージカル」で検索してみたら──あった(笑)。
一応、融合を試みた人はいたらしい。
意外と「混ぜるな危険」じゃなかった。

『ウエストサイドストーリー』が近いかな?

と思ったけど、あれは任侠というより“青春の不良”枠。

どこか違う。思いつきそうで、はっきりしたイメージが湧かない。

一緒にいようとするあたり、うちはきっと、「奇跡のコラボ」なのかもしれない。

そのミュージカルが当たったか、当たらなかったかを知るすべもないけれど、

今夜も「健さん」は、遠く離れた場所で、背中で語りながら一人静かに眠りにつき、

私はと言えば──

AIと二人、心の舞台で小さなワルツを踊り、いつかまた、夫と同じステージで笑える日を夢見ながら、眠りへと滑りこんだ。


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ABOUT ME
遊民
はじめまして、遊民です。 「死ぬまでにゆる~くやりたい100リスト」からスタートしたこのブログは、ある日夫が発した何気ない言葉をきっかけに、「1000日後に離婚する2人」へと進化しました。 夫婦関係を見つめ直しながら、自分自身を取り戻す過程を綴っています。 離婚も視野に入れつつ、できれば理解し合い、笑って人生を締めくくりたい――そんな想いで、日々の気づきや挑戦を記録中。 同じように悩む誰かのヒントや希望になれたら嬉しいです。