【1000分の27日目】フェラーリと、トミカと、粉々になった心のはなし。
風邪が少し良くなってる──
そんなLINEが来たのは昨日のことだった。
私は、ずっと気になっていたことを切り出してみた。
「忘れてるかも知れないけど…」
車検の費用の話。
既読がすぐに付いて、数枚の見積書と請求書が届いた。
やっぱり。
当初の見積書には、部品代として300万円超。
そして、最終の請求書には工賃として350万円が記載されていた。
思い返せば秋ごろから、毎月100万円ずつ振り込んでいた。
請求書も受領書も「欲しい」と何度も伝えたのに、
それらは夫の手元で止まっていた。
まるで、わざと止めているかのように。
──子供じみたこと、やめて欲しい。
でも、そういうことじゃないんだ。
そもそも、次の車検なんて20万円もかからない。
だけど旧車だから、特殊な部品が必要で、タイヤだって普通のものじゃダメだと夫は言う。
ざっと見積もっても、60万円はくだらないだろう。
そう伝えると、夫からあっさりと返事がきた。
「車検、入れないよ」
──なら、なんで直した。
叫びたい気持ちを抑えて、私は指を動かす。
「せっかく直したのに……」
すると夫は、こう言った。
「フェラーリ買うから」
……あまりに意味がわからなくて、私は乾いた笑いとともにこう返した。
「トミカで?」
「その通りです」
笑いに変えられたことが、少しだけ救いだった。
でも私は、念のためにこう書いた。
「とりあえず、60万貯めておくから、ゆっくり考えて」
「よろしくお願いします」
やっぱり、最後は私頼りだ。
いや、待て。
──待て、待て、待て。
どうして、将来売却益が“元嫁の家族”に渡るかもしれないのに、
私がお金を貯めないといけないの?
どう考えても、おかしい。
そういえば、あの手紙も、いまだにスルーされたままだ。
私は、夫の“番頭さん”?
金庫番の妻?
この関係に、「愛」なんて存在してるのだろうか。
私の心が粉々に砕けていることに、彼は気づいているのか。
……いや、気づいてなどいない。
気づこうとすら、していないのかもしれない。
なにが悲しいって、
この夫婦関係が、ただの“お金を管理するシステム”で終わっているように見えることだ。
「私の扱い、かわいそうすぎない?」
心の中で、誰かにそう問いかける。
──でも、いざとなったら、私は冷静に線が引ける人間だ。
このまま、モヤモヤを抱えたまま、遠距離を理由にズルズルと続けていくのはごめんだ。
気持ちが通わぬまま、同じ終着駅に向かって老いていく──そんな結末は、私の望む人生ではない。
待つばかりの人生じゃなく、自分から動いてみよう。
きっとその方が、心は軽くなる。
そう思って、私は一冊のノートを取り出した。
交換ノート。
夫婦で、言葉を交わすノート。
文章が苦手な夫が、どれだけ続けられるかわからないけれど──
試してみようと思う。
何も変わらないかもしれない。
でも、何かが動くかもしれない。
希望は、書き出すところから始まるのだ。
いつも応援ありがとうございます。
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