【1000分の28日目】答えは三択。沈黙もまた、答えになる。
「今日、病院に行きます」
早朝、夫から届いていたLINEにそう書かれていた。
気づいたのは、午前10時を過ぎたころ。
すぐに電話をかけたけれど──出なかった。
だいぶ、悪いのかもしれない。
こんなとき、距離があるというのは、ひどく心細いものだ。
「病院での様子が気になったので、電話しました。
きついなら、折り返しはいらないから、ゆっくり休んで」
そうLINEを送って、スマホを伏せた。
さて、ノートだ。
AIに相談してみたところ、すすめられたのは「A6サイズ」のノート。
コンパクトで、郵送にも適しているらしい。
ホームセンターの事務用品売り場を覗いてみたが、見つからない。
B5やA4は山ほどあるのに──「A6」は、ない。
数件目でようやく見つけたのは、Campusノート。
リングではないものを選び、カバーもかけた。
(……このサイズのカバーが売ってるのに、ノートはなかなか見つからないって、どういうこと?)
夫は、自分の気持ちを言葉にするのが苦手な命式らしい(AI調べ)。
初回のノートには、
手紙に書いた内容と、病気のときに近くにいられないもどかしさに、少しだけ触れてから──
夫が答えやすいように、三択の質問を並べた。
【夫への質問】
1.もしかして、赴任先で余生を過ごそうと考えていますか?
考えている / 考えていない / わからない2.一緒に暮らしたいです。赴任先に行っても良いですか?
良い / ダメ / わからない3.会社の移転を考えていますか?
考えている / 考えていない / わからない4.会社の将来について、具体的な計画はありますか?
計画がある / ない / わからない
内容は、ほんとうに簡単なことだけ。
それでも、このノートをスルーされたら──
もう、笑うしかない。
今回は、満額の小遣いに加えて、預金の整理で出た50万円を入金した通帳も同封した。
私の中では、すでに「旧車の管理者」でいる気持ちは消えていた。
旧車のことで煩わされるのは、もうたくさんだった。
だから私は、自分の意思で、その管理から降りた。
次にノートが返ってきたら、私は支出管理簿を一枚、そっと貼りつけようと思う。
きっと一気に変わることなんて、ない。
彼は、ずっとそういう人だった。
でも私は──
感情ではなく、事実を。
期待ではなく、確認を。
静かに、伝えていくことにした。
気がつけば、既読の文字が、静かにそこにあった。
返事はない。
遠く離れていても、私は回復を願うことしかできない。
いつも応援ありがとうございます。
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